Small moments.
Slow thoughts.
Life in between.
Everyday Aesthetics
Between Cultures
Thoughts & Emotions
Bits & Bobs
Starting Momo & Co.
— Because I Never Fit the Mold —
— A Harvest Season —
Loughborough University, U.K
「冷やし中華、始めました」
夏の訪れを告げる、クラシックなキャッチコピー。あの貼り紙を見ると、「ああ、夏が来たんだな」と思う。四季のある日本という国に暮らす私たちは、季節の移り変わりとともに、人生を重ねていく。
私の人生は「秋」に差し掛かろうとしている。
「人生の秋」という表現には、どこか、もの寂しい響きがあるかもしれない。けれど私は、秋は「実りの季節」だと思っている。春に蒔いた種が、夏に育ち、秋に収穫の時を迎える。
だから私は今、「Momo & Co. はじめます」
小学生の頃、「将来の夢」を聞かれて、「本を書く人」と答えたことがある。
先生に「作家さんになりたいってことね?」と言われた。「いや、ちょっと違くて…」と思ったけど、うまく説明できなくて、「あ、じゃあ、そういうことで」と諦めた。
先生は「作家」という職業の枠の話をしていて、私は「書く」という行為そのものの話をしていた。今なら違いがわかる。
家庭環境の影響もあって、私は早い段階で「枠にハマっているフリ」を覚えた。周囲の大人が好みそうな、喜びそうな自分を演じること。そして厄介なことに、それが器用にできてしまった。
学生時代の私は、枠にぴったりハマる人間だった。無遅刻無欠席、成績優秀。「失われた30年」の真っ只中であったにも関わらず、第一志望の会社から内定をいただき、社会人になった。大人としての自分の未来が、明るいということに1ミリの疑いもなかった。社会に出た自分が「ハマれない」ことに苦しむなんて、微塵も思っていなかった。
でも、現実は違った。
どこに行っても、違和感を感じた。「ここではないどこか」を探し続けた。「ハマってるフリ」を続けることに限界を迎えた私は、「このままでは心が窒息死してしまう」と思い、子供の頃からの憧れの地・ヨーロッパに救いを求めて、30代前半でイギリスへ渡った。
ロンドンに着いて間もない頃のことを、今でもはっきりと覚えている。
ホストファミリーの家があった Royal Oak という駅の近く、線路沿いの道を歩いていた。ロンドンでは珍しい青空を見上げながら、深呼吸した。
「ああ、来るべき場所にやっと来た」
英語もまだまだ。生活にも慣れていない。それでも、心が楽になったのがわかった。
セントマーチンズの修士課程が始まってすぐ、教授にこう言われた。
「あなたは、いろんな仕事を経験して、いろんなことを感じてきた。そんなあなたがイノベーションマネジメントを学ぶことにこそ、意味があるし、価値もあるんだよ」
この言葉にどれほど救われただろう。
異国での大学院生活は、決して平坦な道のりではなかったけれど、「ここなんだ」という確信をもてたことは、私にとって、とても大きな変化だったし、全てを克服するだけの力を持っていた。
2018年の秋、不本意な形で日本に戻った。一時帰国のつもりが、家族の状況とパンデミックという社会状況のダブルパンチで、イギリスに戻る術も、気力も失ってしまった。
しばらくは、どうしていいかわからない時期が続いた。イギリス時代の自分を手放すのに、時間がかかった。
去年、あるクリエイティブなプロジェクトに参加した。その世界の人たちと話していると、言葉が自然に心と頭に染み渡った。
自分が本来持っている感覚や視点の粒度。仕事の場面では、しばらく封印してきたものだった。心の奥底に鍵をかけて、しまっておいた大切な小箱が、静かに、そっと開くような音がした。
枠がないなら、作ればいい。そんな境地になれたのは、ごく最近のこと。
Momo & Co. は、ガーデン。これまでの経験と、これからの出会いを育てる場所。ここで花を咲かせて、蜜を作る。
美味しそうな蜜には、味覚という感性の合うミツバチがやってくる。誰もを魅了する蜜ではないかもしれないけど、感性を共有できる人たちと、丁寧な庭仕事をしていきたい。
私の人生の「実りの季節」のはじまり。